こんにちは。「まっしろライター」のましろ(@mashirog)です。
今まで、単行本が発売されてからそのマンガのレビューを書くことが多かったのですが、新しい試みとして「発売日前」にレビューを書いてみようと思います。
もしレビューを見ていただいて「このマンガを読みたい」と思っていただけたとしても、発売日から時間が経って本屋に平積みされなくなっていたら、買うのを諦めてしまうかもしれないので。
人気作品の最新巻ならともかく、新人作家さんの第1巻とかだと特に……。
最初に取り上げるのは、「まんがタイムきらら」で連載中の、ぼや野さんの4コママンガ『ぽんこつヒーローアイリーン』。明日11月27日、単行本第1巻が発売されます。
タイトルを見たとき、実は違和感がありました。
「ヒーロー」? 確かに女性のヒーローもいるけど、この衣装なら「魔法少女」なのでは?
だけど、読んでみて分かりました。アイリーンは確かに「ヒーロー」でした。
「左遷ヒーロー」に「高卒無職ヒーロー」というパワーワード
引用:『ぽんこつヒーローアイリーン』第1話1ページ
最初からクライマックス。
火星のヒーロー会社で働く少女・アイリーン。
街で怪人が暴れているのに寝坊して遅刻しただけでなく、魔法を暴発させるというヘマをした結果、会社の上司から地球への左遷長期出張を命じられてしまう。
怪人を倒して、変身パクトにストーンを集めないと火星には帰れない。
地球で出会ったもうひとりのヒーロー・ラブリーメロン(というアニメキャラのコスプレをしている高卒無職の女性)と一緒に、街の平和を守ります。
ニコニコ静画では、ラブリーメロンを主人公にした番外編『高卒無職ヒーローラブリーメロン』も連載中です(※現在は公開停止。完結巻の2巻に収録予定)。
アイリーンがぽんこつである理由
タイトルにもある通り、アイリーンはとにかくぽんこつ。
作者のぼや野さんも使っている「ぽこリーン」(ぽんこつヒーローアイリーン)という脱力感あふれる略称が、それに拍車をかけます。
怪人を倒してストーンを集めるといっても、地球にそんなのいるわけがない。
一刻も早く火星に帰りたいアイリーンは、目に見えるものすべてを怪人と思い込み、ことあるごとに勝負をしかけます。
引用:『ぽんこつヒーローアイリーン』第2話7ページ
ラーメンなんかに負けたりしない!→ラーメンには勝てなかったよ…。
引用:『ぽんこつヒーローアイリーン』第4話6ページ
やけにこわい着ぐるみって、たまにあるよね。
絵に勢いのあるギャグ4コマとしてもピカイチですが、「どうしてアイリーンはこんなにもぽんこつなのか?」を考えると、この作品の持つ別の一面が見えてきます。
アイリーンは、「戦う」ことしか知らないんですよね。
彼女が住んでいた火星は、怪人が大暴れしているせいで気候にも影響が出ているという、結構ガチでやばい環境です。
だから、平和な地球に来ても落ち着かず、常に気を張っている。
『ぽんこつヒーローアイリーン』は、ヒーローとしてはまだまだ未熟なアイリーンが、少しずつ真のヒーローに成長していく姿を描いた物語でもあるのです。
「ヒロイン」や「魔法少女」というタイトルでは、おそらくこの読後感は得られないでしょう。
怪人を倒すよりも大切なこと
アイリーンの持つ変身パクトは、実は「誰かの役に立つ」「誰かに感謝される」ことでもストーンが集まる仕組みになっています。
怪人を倒すだけがヒーローの仕事ではないことをアイリーンに学ばせたいという、上司の心配りでした。
(併せて、本当に厄介払いされた可能性も否定できませんが…)
引用:『ぽんこつヒーローアイリーン』第13話7ページ
どんなタイミングかは、単行本でのお楽しみ。
そんな上司の真意など知るはずもないアイリーンは、子どものケンカを仲裁したときなど、「思いがけない」タイミングで集まってくるストーンに戸惑います。
「ずいぶんと楽ちん仕様だな」「でもなんかそれって…それって…」
怪人と戦いたいという想いとは裏腹に、地球で普通に暮らしているだけで、勝手にどんどんストーンが貯まっていく。
それはつまり、アイリーンは無意識のうちに人の役に立とうとしている、「ヒーロー」の素質があるということに他なりません。
地球に派遣された本当の理由にアイリーンが気づくのは、当分先のはず。
読者にとっては、むしろちょうどいい。本人には悪いですが、それまでは存分に彼女のぽんこつぶりを楽しみ、「がんばれ」と声援を送りましょう。
完全無欠なヒーローであれば、応援する必要などないのですから。