「訳あり物件」ってありますよね。過去に事件があったり、幽霊が出たりする代わりに、家賃が安くなっている物件。
じゃあ、ぐうたらなお姉さんのお世話をする代わりに、家賃がタダになる部屋なんていかがでしょうか?
引用:『マコさんは死んでも自立しない』第1話(マガポケ)
むしろ、割り増しで家賃払うので住ませてください。
「週刊少年マガジン」で連載中の『マコさんは死んでも自立しない』は、男子高校生と女子大生のうらやましすぎる同居生活を描いた、イチャイチャラブコメ4コマ。単行本1巻が、明日4月17日に発売されます。
作者の千田大輔さんは、こんな作品を描いている一方、「マンガボックス」で『異常者の愛』というサイコホラーも連載中。
どちらも週刊連載なので、頭の中が混乱してしまわないのか気になります。
自立しなくていいから、爆発してほしい
遠野隣(とおの・りん)は、高校入学を機に上京してきた男の子。
引っ越し当日、アパートの大家さんから「孫の面倒を見てくれたら家賃はいらない」という話を持ちかけられ、あっさりOKしてしまいます。
てっきり小さな子どもかと思いきや、孫というのはなんと、20歳の女子大生・栗橋真子(くりはし・まこ)でした。
引用:『マコさんは死んでも自立しない』第1話(マガポケ)
家賃ゼロなのでお金は貯まるけど、別のものも溜まりそう。
家賃タダの上、美人なお姉さんと一緒に暮らせる。……そんなうまい話があるはずもなく。
外面はいいマコさんですが、家の中ではゲームばかり。掃除もしないし、朝も起こされるまで布団から出てこない。
食事すら、自分ではお箸を持たず、「あーん」で食べさせてもらおうする。タイトル通り、死んでも自立しない。
おまけにマコさんには、羞恥心もありません。
パンツ丸出しで部屋をウロウロしたり、居間で服を脱ぎだしたり。その姿を注意されると、興奮した?とでも言いたげに挑発的な視線を投げかける。
彼女に一目惚れしてしまっている、年ごろの男子高校生のリンは、いろいろと限界です。主に下半身が。
引用:『マコさんは死んでも自立しない』第7話(マガポケ)
おまかわ、あるいはおま尊。
しかしながら、小悪魔系お姉さんと振り回され系男子という一方通行の構図に留まらないのが、この作品の面白いところ。
基本的にはリン視点で綴られる4コマですが、各話のラスト数ページは普通のコマ割りで、視点もマコさんに切り替わる。そこで、実はマコさんもリンが好きであることが分かるのです。
下着姿で誘惑したり、思わせぶりな発言をしたりしているのは、少しでもリンの気を引きたいから。大ゴマで描かれるマコさんのテレ顔が、とにかくかわいい……。
これ、ネタバレではありません。何せ、第1話の時点でバレバレですから。
自身の好意を悟られたくないリンは、内心ドキドキなのを隠し、マコさんに対してあえて素っ気なく振る舞っています。
そんな態度が、マコさんをやきもきさせる。これだけアピールしているのに、異性として意識されていないのだろうかと心配になる。
そして、からかいがますますエスカレートする。マコさんもまた、リンに振り回されているのです。
すれ違いを燃料にして回り続ける、ラブコメの永久機関。あえて言おう、爆発しろ――と。
もう少し、このままで
作中のキャラのほとんどは、リンとマコさんが相思相愛であることに気づいています。
そりゃそうだ。あれだけ分かりやすいのだから。むしろ、気づかない本人たちがおかしい。
さっさと告白しろと煽られたりして、いいようにおもちゃにされるふたり。ですが、実は両想いだとバラしてしまうような、無粋な真似をするキャラはいません。
なぜか? 黙っていた方が面白いのはもちろん、くっつきそうでくっつかない今の距離感が心地よいと、周りの人たちも思っているからではないでしょうか。
引用:『マコさんは死んでも自立しない』第15話(マガポケ)
(人としては)好きとリンに言われてこの反応。毎回この顔を見せられる読者の気持ちにもなってほしい。
ダメ人間のように見えて、マコさんには意外と常識人の一面もあります。
少なくとも、下着姿でだらけたり、思う存分わがままを言ったりするのは、リンの前でだけ。
それは、リンを信頼しているからでもあるし、良くも悪くもリンが自分に興味を持っていないと思っているからでもある。
告白に失敗すれば、もちろん同居生活はおしまい。仮に成功しても、今度は逆にお互いを意識しすぎて、ぎこちない関係になってしまうかもしれません。
リンの高校卒業か、マコさんの就職か。いつか必ず、夢から覚めないといけないときが来る。
それまでは、今のままでいい。文句を言われつつも、リンにお世話されたい。だからこそ、マコさんは死んでも自立しない。