マツ係長は、31歳の独身OL。
マツ係長は、美人で仕事もできる、みんなの憧れの的。
マツ係長は、女性アイドルグループ「カラフル☆ワンダー」のメンバー、しろたん推し――。
引用:『マツ係長は女ヲタ』第6話(まんがタイム彩)
本当は赤色が好きなマツ係長。推しのためなら、ネイルもカラスも白くなる。
「まんがホーム」で連載中の『マツ係長は女ヲタ』は、女性アイドルを好きになってしまった美人女上司の苦悩をコミカルに描いた作品。単行本1巻が、3月7日に発売されます。
作者の奥十(おくと)さんも他ならぬ「女ヲタ」で、特にHKT48の兒玉遥さんを推しているとのこと。
そして、単行本の帯の宣伝コメントを、その兒玉遥さんが書かれています。
単行本が発売されたことは、もちろん読者の私たちもうれしいのですが、最も喜んでいるのは奥十さん自身でしょう。
マツ係長は、マイナーヲタの代弁者
色をテーマにした5人組の女性アイドルグループ「カラフル☆ワンダー」、通称「カラワン」。
名前の通り、彩り鮮やかな他のメンバーに比べて、「白」を担当するしろたんはとても慎ましやかです。有り体に言うと、空気、不人気です。
もちろん見た目はかわいいものの、アイドルとしては並。歌や踊りもそこまで上手くなく、演技にいたっては棒読み。さらには一部のメンバーとの仲も……ゲフンゲフン。
メンタルも弱く、落ち込むと食に逃げてしまうため体型を崩しやすい。こんな子が芸能界で生き残っていけるのか? とファンからも心配されています。
引用:『マツ係長は女ヲタ』第2話(まんがタイム彩)
アニメ化された作品より、非アニメ化作品を応援したくなるのに似ている。
しかし、その普通さがたまらないという、マツ係長のような人はどんな趣味の世界にもいるものです。かくいう私も、『マリア様がみてる』では桂さんが好きでした(聞いてない)。
むしろ、好きなアイドルがメジャーになってくると、熱が冷めて応援する意欲がなくなってしまう人すらいるほど。
自分がこの子を支えてあげなければいけないという、庇護欲と使命感。マイナー寄りの嗜好を持つ方であれば、マツ係長がしろたんを応援する気持ちに共感できるはずです。
マツ係長は、しろたんを想うあまり、しろたんを布教できない
31歳で係長。男性か女性かに関係なく、マツ係長が相当優秀な人であることがうかがえます。
状況判断力に優れ、周囲への気配りも怠らず、無駄な残業や休日出勤は一切しない。そんな彼女の姿は、他の社員たちからの尊敬を集めています。
しかし、さっさと帰宅するのは、ドルヲタ活動に費やす時間を作るため。仕事への意欲の高さも、「しろたんだって寒空の下で水着撮影しているのだから、自分もがんばらないと」というのが理由。
「デキる女」のイメージに反して意外と中身はポンコツなマツ係長と、都合よく解釈してくれる社員たち、そして傍観者である部下のウメ君の温度差が、この作品の魅力といえるでしょう。
引用:『マツ係長は女ヲタ』第3話(まんがタイム彩)
家族旅行のために仕事をがんばるお父さんと、やっていることは同じ。
マツ係長のように、会社や学校でオタク趣味を隠している方は多いと思います。
なぜ隠すのか? よく聞く理由は、「恥ずかしいから」「気持ち悪いと思われたくないから」など、「自分のため」のものでしょうか。
しかし、マツ係長がオタクであることを隠すのは、あくまで「しろたんのため」です。
ドルヲタでない会社の人たちは、自分を通してしろたんを見る。自分の印象が悪ければ、しろたんの印象も悪くなってしまう。
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざもあるように、「マツ係長憎けりゃしろたんまで憎い」を恐れているわけです。
仕事熱心なのも、本人の性格や、ヲタ活動の資金集めのためでもあると思いますが、万が一ヲタバレしたときに備えてでもあるのかもしれません。
自分がどう思われようと構わない。けれど、しろたんに迷惑はかけたくない。
本当は布教して、ひとりでも多く「メロたん」(「しろたんにメロメロ民」の略)を増やしたい。けれど、自分がしろたんに釣り合う人間と思っていないからこそ、それはできない。
マツ係長のジレンマは、しろたんを推し続ける限り、きっと永遠に続くのでしょう。
マツ係長は、部下のウメ君とラブコメになりそうでならない
部下のウメ君は、課の中でただひとり、マツ係長のドルヲタ趣味に気づいている人間です。
自分だけが知っている、美人女上司の秘密。これでラブらないわけがない、掲載誌が掲載誌なら、それ以上の関係にすら発展しているはず。
しかし、残念かなウメ君は、アイドルにまったく興味がないばかりか、空気も読めない今どきの若者。
しろたんって別にかわいくないでしょ? と地雷を踏みまくるせいで、一向に甘い展開になりません。現時点では、マツ係長のハチャメチャぶりを楽しむ純粋なギャグ4コマという印象です。
逆に考えると、これだけ素材が揃っているのにラブコメをしていないところが、この作品のすごさでもあります。
引用:『マツ係長は女ヲタ』第2話(まんがタイム彩)
その後、ウメ君の姿を見た者はいない。
いつか、ふたりで仲良くカラワンのライブに行くようになり、熱狂するウメ君に対して「しろたんより私を見てよ……」なんてマツ係長が嫉妬するようになったら、胸キュンしまくりなのですが。
いや、彼女のこと。「私を見てる暇があったらしろたんを応援しなさい!」と言うはずですよね。