まいちゃんは中学1年生。小学校時代からガラリと環境が変わったり、思春期に突入したり、繊細なお年頃です。
最近は、お兄ちゃんと一緒にお風呂にも入らなくなりました。
……「最近は」って、どゆこと?
引用:『にーにといっしょ!』第1話
どう見ても反抗期。
よぱん男爵さんの『にーにといっしょ!』は、仲良しと呼ぶにはちょっと距離が近すぎる、ふたり暮らしの兄妹のお話。単行本1巻が、2月27日に発売されます。
掲載誌の「まんがタイムきらら」で休載が続いているのが気になりますが、応援する意味も込めて今回はこの作品をレビューさせていただきます。
妹もやばいけど、兄も結構やばい
思春期の女の子が、それまでベタベタに甘えていた父親や兄を嫌うようになるのは、よくあること。
単なるワガママではなく、近親相姦を避けるために遺伝子レベルでそうなっているという説もあるようです。
まいちゃんも、「中学生にもなって兄妹で仲良いとかありえない」とクラスメイトが言っているのを聞き、ひょっとして自分はブラコンなのか? と今さらながら気にするように……。
引用:『にーにといっしょ!』第1話
お互いの写真を撮り合う、どの家庭でも見られる光景。
しかし、これで兄離れしてしまったら話が終わってしまいます。
下着は別々に洗い、お風呂もひとりで入るようになったけれど、ソファに並んで映画を観たり、自分の部屋より兄の部屋にいることの方が多かったり、距離の近さはあまり変わりません。
幼い頃から両親と離れて暮らしているまいちゃんにとって、「にーに」は兄というだけでなく、一家の大黒柱としての父親、家事をしてくれる母親の代わりでもある。
彼女が兄離れをするということは、家族全員と離ればなれになるということ。遺伝子が何を言おうと、そう簡単にできるわけがないのです。
そうした、まいちゃんのブラコンぶりに拍車をかけているのが、他ならぬ兄の態度。
妹がやめると言うまで一緒にお風呂に入っている時点で、色々とおかしい。間違いなく、彼もまたシスコンです。
他にも、体温を測るために腋に指を突っ込んだり、おしおきと称してあられもない姿の写真を撮ったり。読んでいて、サービスシーンだと喜ぶよりも、「これ大丈夫なの?」と心配にすらなります。
もちろん、妹を性的な目で見ているわけではなく、異性と思っていないからこその行動なのでしょうが……。
引用:『にーにといっしょ!』第4話
この写真を他の人に見せられないことは分かっている。でも消さない。
彼がシスコンになったことにも、深い理由があります。
ふたりの両親がどうして家を空けているのかは、作中で明らかにされていません。回想シーンを見る限り、長期間の海外出張に出かけたのだと思われます。
両親に留守を任された兄は、自分が幼い妹を守るのだと決意します。当時は彼も小学生くらいのはずですから、相当な覚悟だったのではないでしょうか。
まいちゃんのブラコンは、あくまで個人の問題。兄の気持ちにかかわらず、やめようと思えばいつでもやめられます。
しかし、兄のシスコンは自分の意志ではやめられない。むしろ、妹が大切なのであれば、自分に妹を託した両親のことを想えば、やめるわけにはいかない。
似ているようでベクトルがまったく違う、ブラコン妹とシスコン兄のふたり暮らし。
今のところはコメディタッチの話が多いものの、何かの拍子で一気にシリアスな展開になり得る、決壊する直前の堤防を見ているような緊張感があります。
まんがタイムきららで繰り広げられるチキンレース
にーにが大好きなまいちゃんは、学校でもその話ばかりしています。
友人のともちゃんも、最初は微笑ましく耳を傾けていたのですが、「リンスインシャンプーしか使ったことがない」「自宅で髪を切っている」という話を聞き、まいちゃんが家で虐待されているのではないかと疑います。
その後もいくつかの誤解が重なり、シスコン兄の魔の手からまいちゃんを救い出そうと立ち上がるともちゃん。
しかし、彼女もまいちゃんに友達以上の感情を抱いていて、まいちゃんのベッドにダイブしてクンカクンカするような、兄妹に負けず劣らずのやばい子でした。
まともなキャラは、隣の家に住んでいる女子高生のみくもだけ。彼女にもBL嗜好が見え隠れしますが、それくらいなら普通かと感覚が麻痺してきます。
引用:『にーにといっしょ!』第13話
ともちゃんは、礼儀正しくて友達想いの良い子です。
作者のよぱん男爵さんは、ニコニコ静画でも「妹が可愛いシリーズ」というイラストを投稿されています。
こちらの妹は高校生で、髪型も三つ編みという違いはあるものの、登場人物や設定は『にーにといっしょ!』とほぼ同じ。
今は削除されていますが、シリーズの第1話は「一線を越えた」内容だったらしく、そのため『にーにといっしょ!』の妹は「一線超えてない方の妹」と呼ばれているようです。
そもそも、きらら系の4コマ作品に男が出てくること自体が珍しいのですが、『にーにといっしょ!』の兄妹もあるいは一線を越えてしまうのか。ともちゃんのキャラクターもどこまでエスカレートするのか。
きららでどこまで描いても許されるか、という限界に挑戦しているようにさえ見えるこの作品。色々な意味で、今後の展開から目が離せません。
また、「妹が可愛いシリーズ」を見てから再度『にーにといっしょ!』を読むと、あることに気づくのですが……。
ネタバレになりそうので、書くのはやめておきます(この発言がネタバレ)。単行本でお確かめください。