マンガ

『はんどすたんど!』の晴沢ひなたについてとことん語りたい

マンガに好きなキャラクターが出てくると、ついそのキャラだけを見てしまう。

最近読んだ作品だと、『ななつ神オンリー!』の毘沙門天や、『広がる地図とホウキ星』のヴェリなどが当てはまる。

『はんどすたんど!』では、ひなたがそのキャラだと気づいた。

作品そのものは1巻のころから面白いと思っていたものの、特定の誰かが好きという感情はなかった。むしろ、どのキャラも好き。

だが、2巻のひなたメイン回を読んで、なにかが「はじけた」(『赤い実はじけた』風に)。

『はんどすたんど!』は、「4コマオブザイヤー2016」の新刊部門で3位に輝いた。

4コマオブザイヤー2015」の新刊部門1位である『まちカドまぞく』は、「第3回次にくるマンガ大賞」にもノミネートされている。

多くの4コマファンが、「次にくる」のは『はんどすたんど!』だと思っているはずだ。

作品のレビューも、すでに色々なサイトやブログで書かれている。今から同じようなレビューを書いても、あまり意味がないだろう。

そこでこの記事では、ひなたひとりに焦点をあててレビューを書きたい。

どこかにいる(?)ひなたファンの方に読んでもらえれば幸いである。

名は体を…あらわさない

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引用:『はんどすたんど!』1巻15ページ

ひなた(フルネーム:晴沢ひなた)は、第1話から登場する。

ななみとゆかが高校で新しく立ち上げた体操部に、幼馴染のいちごと一緒に仮入部を申し込む。

「晴」に「ひなた」。きっと元気で明るい子なんだろうと期待するななみたちだが、実際に部室にやってきたのは、どんよりと暗いオーラを漂わせる女の子だった。

いちごの方も、かわいらしい名前とは裏腹に、ツリ目で気の強そうな性格である。

きらら4コマの第1話といえば、雑誌ではゲスト掲載の扱い。これが面白いかどうかで連載になるかが決まる。

名前と性格に大きなギャップがあるひなた・いちごのコンビは、インパクトが抜群。ふたりが登場した時点で、連載は確定したと言っていい。

圧倒的ネガティブ

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引用:『はんどすたんど!』1巻55ページ

ひなたの特徴であり、欠点でもあるのが、とにかくネガティブだということ。

部活動を行なう際は、ケガをしないか、競技道具が途中で壊れないかを常に気にしている。

普段の生活でも、登校中に忘れ物を取りに戻ったななみを心配するあまり、自分も遅刻しそうになっている。

心優しいともいえるが、損の多い性格だ。

なお、この性格は遺伝によるものらしい。

両親もひなたと同様に極度の心配性で、家族そろってパラシュートの講習を受けたり、休日は体力づくりのために山登りなどをしたりしているという。

圧倒的スタイル

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引用:『はんどすたんど!』2巻36ページ

体操は、背の低い方が、体重の軽い方が有利だという。

飛んだり跳ねたりする競技だ。ある程度は体力や筋力で補えるとしても、体が小さいに越したことはない。

つまり、ひなたの体型はお世辞にも体操に向いているとはいえない。

身長は、登場キャラクターの中で最も高い。おそらく、170cm近くあるのではないか。

太っているわけではないものの、家族と一緒に体を鍛えていることもあって、全体的にがっしりしている。

何より、あのおっぱい。

小柄な選手が多い体操の大会にこんな子が参加していたら、さぞ注目されるだろう(色々な意味で)。

圧倒的女子力

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引用:『はんどすたんど!』2巻77ページ

ひなたは、体操部員の中で最も背が高いと同時に、最も女の子らしくもある。

ゆかの方がおしとやかそうにも見えるが、あちらは割と奇行が多い。2巻ではその傾向がさらに増している。

それはさておき。ネガティブになっているとき以外、ひなたはいつも笑顔を絶やさない。部員たちを見つめる表情は、聖母のようでさえある。

料理や手芸が得意で、手作りのお菓子などをよく部室に持ってきている。いちご曰く、特にクッキーが絶品だという。

前述のとおり、『はんどすたんど!』2巻には初めてのひなたメイン回が収録されている。そこに登場する母親はひなたにそっくりで、家庭的な雰囲気のある女性だった。

母親からは後ろ向きな性格だけでなく、良い面もしっかり受け継いだのだろう。

また、ぜひ特筆しておきたいのが、彼女の私服。

すごくかわいい(語彙)。

ななみとの関係

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引用:『はんどすたんど!』1巻49ページ

ひなたと反対に、ななみの身長は平均的な女子高校生よりもかなり低い。

そんな彼女を、ひなたは妹のようにかわいがっている。ななみを肩車するシーンもときおり描かれていて、むしろ親子のようにも見える。

ななみから見ても、ひなたへの好感度は高い。部屋のインテリアや字のきれいさを褒めるなど、背の高さとは関係なくひなたをきちんと「かわいい女の子」と認識している。

というより、問題児(?)と思われることも多いななみだが、決して人を傷つけるような言動はしない。

いちごに対してだけやたら突っかかっているのは、ななみなりの親愛の証なのだ。

ゆかとの関係

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引用:『はんどすたんど!』2巻84ページ

体操の演技中、ひなたはいつも「失敗するかもしれない」とおびえている。

実際には、大きなミスをせずに演技を終えることも多いが、失敗をおそれるあまり技の難易度を高くできないためだ。

一方ゆかは、全国レベルの実力があるにもかかわらず、いざ本番になると緊張してしまって本来の演技ができない。

このように、ひなたとゆかは、お互いの短所を理解しあえる関係だ。

ゆかが緊張のあまり倒れたときは膝枕をしたり、ゆかが寒さに震えているときはコートをかけてあげたりと、彼女に対してひなたは特に献身的である。

普段から自分の練習に付き合ってもらっているという、ゆかへの感謝の気持ちも含まれているのだろう。

いちごとの関係

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引用:『はんどすたんど!』2巻79ページ

ひなたといちごは幼馴染。少なくとも、中学校からの付き合いがある。

性格は似ていないが、どちらも成績優秀。中学時代は、ふたりとも茶道部に所属していた。

体操部に入ったのも、いちごが最初に入部したいと言い出し、ひなたが彼女についていった形だ。

だが、ふたりはただ一緒にいるだけの関係ではない。

運動の苦手ないちごが体操部に入ったのは、ラジオ体操をするくらいの軽い部活だと勘違いしたからだ。

勘違いとわかった時点で入部をキャンセルしてもいいはずだが、負けず嫌いのいちごは逃げなかった。

最初は逆上がりすらできなかったのに、毎日コツコツと柔軟や筋トレを行なった結果、2巻では段違い平行棒で簡単な演技ができるまでに成長している。

そんな幼馴染の姿を見て、ひなたも早朝ランニングを始めるようになる。

ひなたといちごは、単なる仲良しではなく、お互いに切磋琢磨することができる、まさに「親友」だ。

あまね先生との関係

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引用:『はんどすたんど!』1巻73ページ

『ゆゆ式』の頼子先生や『けいおん!』のさわ子先生など、かつてのきらら作品には「何もしない先生」が多かった。よく言えば、生徒の自主性を尊重しているのだが。

ただ、このごろ――特にきららMAXの作品には、きちんと指導をする先生が増えている。『みゅ~こん!』の真珠先生や、『夢見るプリマ・ガール!』のれいか先生。

『はんどすたんど!』のあまね先生もそのひとりだ。

学生時代は将来を有望視された体操選手であり、その指導内容はわかりやすく、理にかなっている。

性格上、ひなたは自分から先生に声をかけるタイプではないが、2巻では平均台の練習を見てもらうようお願いするなど、積極性も見え始めている。

また、ふたりには「胸が大きい」という共通点がある。

あまね先生が教師になったのは、胸が成長しすぎてしまい、体操に支障をきたすようになったためだという。

ひなたは胸だけでなく背も高いため、今のところ競技への影響は出ていないが、才能や努力と関係ないところでハンデを抱えてしまうつらさは、あまね先生が最もわかっている。

個性的な他の部員たちより地味なひなたのことも、あまね先生は大事な生徒としてしっかり見守っているに違いない。

ひなたが体操をする意義

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引用:『はんどすたんど!』1巻99ページ

ソチオリンピックの女子フィギュアスケート金メダリストであるリプニツカヤ選手が、先日引退を発表した。

拒食症が原因とのことだ。

ほぼ同時期に、女子マラソンの元日本代表選手が万引きで逮捕されている。

万引きは、拒食症など摂食障害の典型的な症状だという。

フィギュアスケートもマラソンも、体重の軽さが有利になる競技である。太ってはいけない、食べてはいけないと思いつめてしまうのは、もはや職業病だろう。

ひなたが体操をしていること。『はんどすたんど!』という、体操をテーマにした作品に登場していることには、大きな意味があると思っている。

背の高さや胸の大きさ、それに伴う体重の重さというハンデを抱えているが、無理なダイエットをしようとしている様子はない。

むしろ、体を鍛えるためにランニングを始めたり、適性があると感じた平均台の練習に力を入れるようになったりと、自身の長所を伸ばす努力を続けている。

リオオリンピックの女子体操代表選手は、5名中4名が140cm台(内山由綺選手のみ160cm)。

背が高く見える元代表の田中理恵さんも、実は158cmである。

これから先、ひなたがどれだけ練習を重ねて上達したとしても、全道大会で入賞するようなレベルにはならないかもしれない。

だが、体操選手としては大柄なひなたが、その手足をおもいきり広げて、笑顔でのびのびと演技ができるようになったら。

観る人に与える感動は、金メダル級ではないだろうか。