こんにちは。「まっしろライター」のましろ(@mashirog)です。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171007-00000009-jij-sociheadlines.yahoo.co.jp
この記事について気になることがあったので、私なりの考えを書いてみます。
「移動回数」という尺度
記事のもとになっているアンケートは、ジェイアール東日本企画のプロジェクト組織「MoveDesign Lab」が2017年3月に実施しています。「生活者の移動行動の実態を把握するための調査」とのことです。
アンケート結果の詳細は、こちらのページで公開されています。
「ジェイアール東日本企画」はJR東日本の子会社である広告代理店なので、アンケートの取り方自体が間違っているという可能性は低いと思います。
そのアンケートの結果、1ヵ月の外出回数の平均は20代が37.3回で、年代別で最も少ない。70代の40.8回をも下回っていることが分かりました。
20代が70代よりも外出していないという結果は、なかなかインパクトが強いです。こうした結果になった理由を、上記の記事では「インターネットやスマートフォンが普及し、買い物など多くのことが自宅で完結できるようになったため」と分析しています。
一方、この記事を読んだ人は、記事やはてなブックマークのコメントで以下のように述べています。
- 今の若者はお金がないから、家の中にいるしかない
- 残業ばかりで疲れているから、休日は外出する気がしない
確かに「外出したくてもできない」人もいるのでしょうが、それだけが理由だろうか? そもそも、本当に若い人は外出をしないのだろうか? と疑問を感じました。
憶測ですが、ポケモンGOをしたり、インスタ映えする写真を撮ったりするために、むしろ若い人の方が色々な場所に出かけているような気がします。
気になったのは、このアンケートで調査しているのが「移動回数」であること。「外出している時間」ではありません。
例えば、定年退職した70代の方が、早起きして家の近くを散歩して、午後にスーパーに買い物に行けば、「1日2回」移動したことになります。
一方、会社勤めをしている20代の方が土曜日に日帰り旅行をしたとしても、移動回数は「1日1回」です。次の日曜日は家でごろごろしていたら、「1日0.5回」になります。
なので、単純に「移動回数が少ない」=「外出していない」という式は成り立ちません。
アンケートでは、移動回数だけでなく「どこへ行ったか」も調査しているみたいなので、その内訳も見てみたいですね。
「お年寄りは病気でもないのに病院に行くから、それでカウントを稼いでるんだろ」という趣旨のコメントもありましたが、どうなんだろう…。
「引きこもり」という言葉へのイメージ
アンケートでは、「自分は『ひきこもり』だと思うか?」という質問も行っています。
それによると、「非常にそう思う」「まあそう思う」の割合は、20代が62.3%で最も多い。年齢が高くなるほど割合は低くなり、70代では16.7%という結果でした。
もちろんこれも、「今の若者は引きこもりなんだ」とそのまま解釈はできません。アンケートも、あくまで「引きこもりだと思うか」という「意識」の調査であって、厚生労働省の定義する「状態」を調査したものではないと注釈されています。
考えるに、今の若い人は「引きこもり」という言葉に悪いイメージを持っていないのではないでしょうか。
30代の人が、「移動回数」は月平均49.1回とすべての年代で最も多いのに、「引きこもりだと思う」割合は50.2%と20代に次いで高いことからも、この解釈は大きく間違っていないのではないかと思います。
「20代の6割が引きこもりを自認」というのは、若い人は「引きこもり」を「予定がないから1日中家にいる」程度の意味で使うというのも大きい気がします。年配の人にとっては、さも病気みたいなイメージがあるのかもしれませんが
— ましろ@ライター (@mashirog) October 7, 2017
私が同じ質問を受けたら、おそらく「まあそう思う」と答えます。何なら「非常にそう思う」でもいいです。もちろん、休みの日は神社めぐりに出かけることもあるので、本来の意味での「引きこもり」ではありません。
一方、年配の方は「引きこもり」といえばそれこそ病気のようなイメージを持っている。1日中家にいる程度で、自分を「引きこもり」と言うことに抵抗感があるのではないでしょうか。
アンケート自体に、20代を蔑む意図はない
今に始まったことではありませんが、記事でのアンケートの切り取り方にちょっと悪意がありますね。いかにも「20代は外出しないで家に引きこもってばかりいる」というように読める。
調査結果をすべて読むと、決して若い人を馬鹿にするニュアンスはないことが分かります。
むしろ、スマートフォンの普及によって、これまでとは移動の質が変わってきているという分析が行われています。
- スマホ等の普及で、これまでに行かなかったような場所に行くようになった
- スマホ等を使うようになって移動の時間が楽しくなった
- その場で目撃したものは写真に撮りSNSなどでシェアする
これらの質問に「あてはまる」と回答した割合は、いずれも20代が最も高いという結果でした。
SNSやブログに投稿された写真を見て興味を持ち、今まで知らなかった場所に行ってみる。そこで撮った写真を自分もアップして、また別の誰かが見る。
そうした移動の形が、若い人を中心に広がっている傾向が分かる、面白いアンケートではないでしょうか。
以上、記事のもとになっているアンケートを調べてみると、別の考え方が見えてくるのではないか、という雑記でした。