まさに神4コマ
自分が勝手に「神4コマ」と呼んでいる作品に、『ミソニノミコト』と『神様生徒会部!』がある。
どちらもまんがタイムきらら系列の雑誌に連載されていた4コマで、日本神話の神々が数多く登場する。
ゆえに神4コマ。もちろん、それくらい面白い4コマという意味も含んでいる。
2つの作品に共通するのは、大胆な解釈を加えつつも、基本的には日本神話に関する設定を忠実に再現している点だ。
アマテラスはどちらの作品でも最高神に位置しているし、どれだけ仲良くしていても人間と神様は同じ時間を生きられないことも示唆されている。
『ミソニノミコト』にはサバの味噌煮やおからを司るオリジナルの神様がいて、『神様生徒会部!』では男神のタヂカラオやオモイカネが女子高生として描かれている。
しかし、物語の根幹をなす部分が揺るぎないので、これらの設定に違和感はない。
大きな嘘は許されても、小さな嘘は許されないのだ。
『ななつ神オンリー!』も、そんな神4コマのひとつである。
七福神が人間界で女性アイドルグループを始めるというストーリーながら、作中には日本神話由来の小ネタが散りばめられている。
布袋は七福神の中で最も地味だったり、同一神ともいわれる福禄寿と寿老人は見た目の区別がつけづらかったり、等々。
また、七福神の中でも知名度が高い恵比寿と大黒天は、アイドルとしての彼女たちのプロデューサーであるアマテラスと縁が深い。
恵比寿とアマテラスは、いわゆるきょうだいの関係にあたる。
大国主と同一視される大黒天は、国譲りの一件でアマテラスと気まずい関係にある。
2柱が事務所にやってきた際、アマテラスはひどく怯えているなど、背景となる日本神話を知っていればよりこの作品を楽しめるだろう。
まさに神7
神々が住む高天原では、日本人が信仰心を失うたびに神様が消滅するという深刻な問題が発生していた。
事態を重く見たアマテラスは、日本人が神様よりも信仰しているもの――アイドルに目をつける。
密かにネットアイドルとして活動している布袋を皮切りに、七福神のアイドル化計画が始まった。
自分が知らないだけの可能性もあるが、神様とアイドルを組み合わせる発想は、ありそうでなかったと思う。
熱心なファンを「信者」と呼んだりもするように、この2つは良く似ている。
グッズを買い、ライブ会場に足を運び、舞台上のアイドルに声援を送る姿は、確かに「信仰」そのものである。
そして、七福神を題材にしているのも秀逸だ。
ソロも良いが、アイドルを応援する醍醐味を最も味わえるのはやはりグループだろう。
メンバーたちが協力し、ときに衝突をしながらも団結していく様子を楽しむも良し。まだパッとしないメンバーに注目し、その子が成長していく過程を楽しむも良し。
昔から7柱のグループとして広く知られていて、メンバーの間に知名度の差もある七福神は、神様アイドル作品の主人公を務めるのにふさわしい。
まさに神展開
恵比寿と大黒天を自分たちのグループに誘う布袋だが、人間のアイドル信仰は一時的なものに過ぎないと拒否されてしまう。
布袋の覚悟を問うため、既にトップアイドルとしての地位を確立している北欧3女神・ノルンのライブを観に行くことを大黒天は提案する。
その会場で彼女たちは、欠員が出たオープニングアクトへの出演を依頼される。
1巻の内容はここまで。つまり、恵比寿と大黒天はまだグループに加入していない。そもそも、グループ名もまだ決まっていない。
1話完結型のギャグ4コマでなく、回をまたいだストーリーがある4コマ作品では、1巻の最終話に大きな見せ場を用意する手法を良く見かける。
連載1話あたりのページ数が通常のコマ割り漫画より少なく、単行本のストックが貯まるのに1、2年かかるため、たとえ1巻が出ても2巻が出る前に打ち切られてしまうことが4コマには多い。
そのため、結果的に1巻で完結することになっても違和感がない作りにしているのではないか、と推測している。
『ななつ神オンリー!』の1巻も、布袋たちがオープニングアクトを成功させ、アイドルとしての第一歩を踏み出すところまで区切り良く描くこともできたはずだ。
明確に2巻への引きを意識した終わり方は、意図的と見るべきだろう。絶対に1巻では終わらせないという決意とも取れるし、ぜひそうなってほしい作品である。