魔界No.2の実力者で、美貌と強さを兼ね揃えるジャヒー様が、人間界にやって来た。
人類は、彼女の姿に震え上がるしかない……っ!
引用:『ジャヒー様はくじけない!』第1話
かわいすぎて震える。
Twitterのプロフィールにも「褐色大好き」と書かれているほど、褐色娘への愛が半端ない昆布わかめさん。
「月刊ガンガンJOKER」で連載中の『ジャヒー様はくじけない!』は、そんな作者の嗜好がこれでもかと詰め込まれた、褐色好き必読の作品です。単行本第1巻が、2月22日に発売されます。
4コマ好きの私としては、2月26日発売の『世界で一番おっぱいが好き!』1巻、3月27日発売の『夢見るプリマ・ガール!』2巻も購入予定ですが、4コマと同じくらい褐色も好きなので(突然の性癖暴露)、今回はこちらをレビューさせていただきます。
魔石よりもステーキがほしい
魔王城に現れたひとりの魔法少女によって、魔力の源である「魔石」が砕かれてしまう。
それは、魔王の死、魔界の崩壊を意味する一大事。
ジャヒー様も魔力の大部分を失い、気がついたときには子どもの姿で人間界に放り出されていました。
本来の姿と魔力を取り戻すため、ジャヒー様は人間界に散らばった魔石の欠片を探すことになります。戻さないでって言わない。
引用:『ジャヒー様はくじけない!』第1話(読切版)
褐色のお姉さんが働く居酒屋。毎日通います。
しかし、それよりも前にやらなければいけないことがありました。生活費の確保です。
魔界で悠々自適の暮らしを送っていたのも遠い昔。今の住まいは、築40年、4畳半、風呂なしのボロアパート。夕食はもやしオンリー。
魔石でお腹は膨れない。わずかに残った力を使って少しの間だけ大人の姿に戻り、居酒屋でアルバイトをする日々。
こんなことをしている場合じゃないと分かっているけれど、時給がちょっと上がれば大喜びし、久しぶりのお肉に舌鼓を打つ。
つい目先のお金や食べ物に飛びついてしまうジャヒー様がぽんこつかわいく、うちに来ればご飯くらい食べさせてあげるのに……と庇護欲をそそられるのです。
ぽんこつすぎるジャヒー様は、現代社会の縮図かもしれない
人間界に飛ばされた魔族は、ジャヒー様だけではありません。
かつてジャヒー様の部下を務めていたドゥルジも、そのひとり。
しかし、ドゥルジはすでに大量の魔石を手に入れているばかりか、会社の社長に上り詰めて高層マンションで暮らしていました。どこで差がついた。
引用:『ジャヒー様はくじけない!』第2話(読切版)
※魔石が砕かれたのは、ほんの数ヶ月前です。
ドゥルジとの格差によって、ジャヒー様の残念ぶりが際立つのですが、少し考えさせられもします。
魔石が砕かれたせいで、ジャヒー様は姿が変わるほど弱体化し、魔王にいたっては命を落としてしまいました。
元々の魔力の強さに比例して、魔石への依存度が高かったのかもしれません。
積み上げてきたものが大きければ大きいほど、それが崩れたときのショックも大きく、立ち直るまでに時間がかかるのです。
今のジャヒー様は、会社を突然クビになった役員のようなもの。
退職金はもらえないし、長年働いて培ったスキルも他の会社では使えず、再就職もままならない。
結局、自分の能力を全く活かせないアルバイトをせざるを得ず、はるかに年下の学生にこき使われる。書いてて泣けてきた。
ジャヒー様のぽんこつぶり。それは、一度でも失敗すると挽回するのが極めて難しいという、現在の日本社会の問題点をも表しているのかもしれません。
作者のこだわりを感じる、褐色ヒロインの描き分け
わずかに残った魔石の力によって、少しの間だけジャヒー様は元の姿に戻ることができます。
その貴重な時間を、年齢制限がある居酒屋のアルバイトをするために使っているのは前述の通り。
重要なのは、この設定によって、本来の姿のジャヒー様と子どもの姿のジャヒー様、2種類の褐色ヒロインを同時に楽しめるということです。
引用:『ジャヒー様はくじけない!』第1話
カラーはもちろん、白黒のページでも映える、それが褐色。
「褐色」という萌え要素の魅力のひとつは、キャラクターの年齢によってそれの意味が変わるところではないでしょうか。
大人の場合は、エキゾチック感や神秘性、セクシーさの象徴として。
子どもの場合は、無邪気さや活発さを強調するために使われることが多い気がします。
そうした違いは、それぞれのジャヒー様の描き分けにも表れています。
本来の姿のジャヒー様はかなりきわどい格好をしていて、引き締まったお腹や太ももがあらわになっています。
アルバイトの制服も、細めのシャツにジーンズと、彼女のスタイルの良さを確認できる組み合わせです。
一方、子どもの姿のジャヒー様は、胸もお尻もまったいら。着ているのはダボダボのTシャツ1枚で、「見えそう」ではあるものの色気は感じません。
あらゆる角度から褐色ヒロインの素晴らしさを描ききったこの作品は、まさに褐色萌えの経典。
褐色好きを満足させるだけでなく、褐色属性に特に興味がない人をもその沼に引きずり込みかねない1冊です。