こんにちは。「まっしろライター」のましろ(@mashirog)です。
私事ですが、前職の仕事で、1年半くらい広島市に長期出張していた時期がありました。中区のレオパレスを借りて。
仕事そのものは置いといて……、広島自体はすごくいい場所でしたね。ご飯はおいしいし、路面電車は走っているし。
去年の12月にも、ふと思い立って2泊3日で旅行してきて、当時行きそびれた宮島や竹原をゆっくり観光したりしました。
「竹原」。朝ドラ『マッサン』の舞台でもありますが、このアカウント的にはやはりアニメ『たまゆら』の聖地。前に広島にいたときは2期の放送直後で人も多かったと思うので、来たのが今回で正解だったかもしれない #広島 #竹原 pic.twitter.com/XOJJQyqmCo
— ましろ@ライター (@mashirog) December 9, 2017
そういう意味で、個人的に単行本が出るのを心待ちにしていた作品がこちら。
こみちまいさんが「まんがホーム」で連載中の、『広島さん、友達になってください』。
単行本1巻が、7月6日に発売されました。電子版は7月13日から配信中です。
これがファミリー4コマだよ、こういうのでいいんだよ芳文社……(何)
主人公のキミちゃんは、行動派のお父さんに振り回され、引っ越し・転校を繰り返していました。そのせいで周囲になじもうとせず、すっかり人見知りな性格になってしまいます。
しかし、そんな生活に嫌気がさしたお母さんは、広島への定住を宣言。あわれ、宮崎での仕事が決まっていたお父さんは単身赴任することに。
もう色々なことを諦めなくていいとお母さんに言われ、キミちゃんは友達を作り、広島という街を知っていこうと決意します。
自分が住むこの場所は、もう通りすぎるところじゃない。広島さん、こんな私でも、友達になってくれますか?
引用:『広島さん、友達になってください』1巻5ページ
転校先の高校で、秋中紅(あきなか・こう)や鳥居真理(とりい・まり)という友達もできたキミちゃんは、彼女たちと一緒に広島のあちこちを歩き回ります。
冒頭に書いた通り、私も去年の12月に広島に行ってきたのですが、そこで観光した場所もちらほら。はからずも本作の聖地巡礼になっていました。
引用:『広島さん、友達になってください』1巻47ページ
「厳島神社」。言わずと知れた世界遺産。干潮時に来て大鳥居の近くまで行ってみたかったものの、時間が合わなかったので満潮時に。でもこれはこれで良い。拝観料は300円、御朱印も300円 #広島 #宮島 pic.twitter.com/hnQ0O2rZwK
— ましろ@ライター (@mashirog) December 8, 2017
引用:『広島さん、友達になってください』1巻48ページ
「豊国神社(通称「千畳閣」)」。豊臣秀吉の命で建立されたが、工事中に秀吉が亡くなったため未完成のまま今に至る。しかしそれにより、天井の裏側などがむき出しになっていて、建築マニアにはたまらない。拝観料100円、御朱印300円 pic.twitter.com/4qVn1u7jUw
— ましろ@ライター (@mashirog) December 8, 2017
引用:『広島さん、友達になってください』1巻97ページ
広島旅行の話、ブログの記事にしようかと思いましたがどうもやる気が起きないので、ツイートするだけにします。とりあえず、昨晩撮った平和大通りのイルミネーション pic.twitter.com/AL5tzGZowv
— ましろ@ライター (@mashirog) December 7, 2017
単行本の表紙では笑顔のキミちゃんですが、第1話の時点ではかなり硬い表情でした。それが、陽気な広島の人たちとのふれあいを通して、少しずつ心の氷を解かしていくんですよね。
これぞファミリー4コマと言うべき、優しさと温かさに包まれた良作。広島に住んでいる方はもちろん、広島に住んでいない方にもおすすめできる作品です(つまり全員)。
広島の歴史と、記憶
作者のこみちまいさんは、10年ほど前に広島県に引っ越してきたらしく、言わばキミちゃんと同じ立場の方です。
ある意味「よそ者」だからこそ、ときには客観的に、ときには実感を込めて、広島の人や街の魅力をマンガにできたのでしょう。
ですが、広島という場所をテーマに物語を描く以上、避けては通れないあの出来事があります。
引用:『広島さん、友達になってください』1巻61ページ
平和記念公園をうろうろするものの、どうしても資料館の中には入れないキミちゃん。
「広島さん」を友達と思うのであれば、今だけではなく、過去のことも知っておく必要がある。だけど、こわい。
それは、キミちゃんが「よそ者」だからでは決してありません。生粋の広島県民である紅も同じ気持ちでした。
「戦争の話お腹痛なるし正直しんどい」
「それでも知らんでええとは思わん」
「どんなに恐ろしゅうても、忘れちゃいけん故郷の歴史よ」
ファミリー4コマとして、読者にほっこりしてもらうのが目的であれば、あえて触れないという選択肢もあったはず。
見て見ぬふりをせず、この話題について誠実に向き合い作品に落とし込んだことに、マンガ家としての、広島に住む人間としての作者の矜持を感じます。
こみちまいさんって、「あの方」ですよね……?
ここからは、作品の内容に関係ない蛇足ですが、どうしても気になるので書かせてください。
こみちまいさんって、山口舞子さんですよね? 昔、「花とゆめ」で『もうすこしがんばりましょう』を連載されていた。
なぜそう思ったかというと。まず、明らかに絵が似てる。
引用:『広島さん、友達になってください』1巻表紙裏
引用:『カギっこ』3巻4ページ
ちょっと違う気もしますが、「山口舞子」名義の最後の単行本『月刊なかとば』(2012年4月20日発売)から6年近く経っているのだから、絵柄が少しくらい変わっても不思議ではないでしょう。
次に、ペンネームが似ている(こみちまい、やまぐちまいこ)。
一説(?)では、『広島さん、友達になってください』なのに「山口舞子」だとややこしいから改名したのではないか、とかなんとか……。
最後に、本作の単行本のあとがきによると、こみちまいさんは広島に越してきた10年前の時点で、「同業」の佐藤両々さんと知り合いだったそうです。
「同業」とは、つまりマンガ家。本作の連載開始は2017年で、それ以前に「こみちまい」名義で作品を発表されていた形跡はありませんが、10年以上前からマンガ家として活動されていたということになります。
以上の点から、こみちまいさん=山口舞子さんである可能性は、かなり高いと考えています。
……と、ここまで書いたものの、ご本人が公表していないことを詮索するのは野暮というもの。
山口舞子さんの作品が好きだった者として、そうだったら嬉しいなくらいに留めておきたいと思います。