11月17日から開催される「まんがタイムきらら展」。前売り券チケットの購入はお済みでしょうか。
展示会の目玉は、これまでに「まんがタイムきらら」系列誌に掲載された人気作品の描き下ろしマンガ&イラスト。
実に1,000以上に及ぶ歴代作品の中から、きらら編集部が厳選した80作品がこちら。
全国のきららファンのみなさん。言いたいことはよ~~~~~く分かります。
「あのマンガが入ってない!」って言いたいんだろ???
……というわけで、80作品に入っていない作品の中から、「自分だったらきらら展にこのマンガも展示する」と思う20作品を選んでみました。この機会にぜひ読んでみてください。
※言うまでもないですが、実際に選ばれた80作品に異論があるわけではありません。念のため。
00年代~10年代の作品(完結済み)
『スーパーメイドちるみさん』
ファミリー4コマ誌のベテラン作家である師走冬子先生も、創刊からしばらくの間は「まんがタイムきらら」で本作を連載していました。……といっても、自分はこのころまだきららを読んでいなかったのですが(読み始めたのは2008年から)。
すぐに物を壊すドジっ子メイドのちるみと、彼女が仕える原田家の人たちが織りなす騒がしい日常。「メイド」という題材は紛れもなく「萌え」ですが、内容はギャグ寄りのファミリー4コマといった感じ。
「まんがタイムきらら」と「まんがタイムスペシャル」で平行連載されていた時期もある。「きらら系」と「タイム系」が今ほど分かれていなかった黎明期を知る作品としても、きらら展に呼んでほしかった。
『きつねさんに化かされたい!』
メインキャラがすんなり高校を卒業して代替わりしたり、付き合いそうにないキャラ同士が付き合ったり、別れそうにないカップルが破局しかけたりと、きららのお約束を破る展開が多かった印象があります。
そもそも、養護教諭の村田先生が男という時点でね……。それでも、やる気がないように見えて、ときどきちゃんと先生らしいことをするのが憎い。
春香の学園祭の話は、きらら史上に残る名エピソード。冗談半分で村田先生を好きだと言っていた春香が、本当に恋をした瞬間。赤い実のはじける音が聞こえてきた。
『かたつむりちゃん』
転校生の片紡舞は、ちょっと不思議な女の子。ランドセルの代わりにカタツムリの殻を背負っていて、頭からは目玉が生えている。だけど、彼女の正体に気づいているのはアンナひとりだけで……。
そんな舞を中心にした日常4コマをしていたのは2話までで、3話から「学校の怪談編」という長期シリーズに突入。どれくらい長期かといえば、最終回(単行本5巻)までずっと続いたくらい。
「まんがタイムきらら」誌上では、掲載位置が巻末で固定されていた。今はもちろん、当時のきららですら浮いていましたが、こういう作品がひとつあると雑誌全体にメリハリができる。
『二丁目路地裏探偵奇譚』
探偵事務所が舞台なのに探偵の仕事をしない。アリスは吸血鬼なのに吸血鬼らしい弱点が何もない。……と、設定はほぼ死んでいるものの、アリスたちがワイワイやっているのを眺めているだけで楽しいマンガだった。
アリスとショコラはもちろん、エミリーとガーネットの関係が特に好き。立場や身分が違っても、人はみんな仲良くなれるというテーマも描かれていたのかなと思う。
『ラッキーストライク!』
高校のボウリング部に所属する女の子たちを描いた部活4コマ。きららの部活4コマといえば『けいおん!』『落花流水』など色々ありますが、テーマとなる競技に関して本格的な説明がなされた作品は、これが初めてだったと思う。
読めば本当にボウリングがしたくなるし、読めば本当にボウリングがうまくなるマンガ。スコアで100を超えたい人は、2巻の描き下ろしページを読もう。
『もっかい!』
本当は『グレーゾーン』を選びたいけど、最低でも単行本が出ている作品という基準で選んでいるので、こちらを。
私たちは、どの部分に着目してこの4コマを読むべきだったのか。少なくとも、ビックリマークの多さではなかったと思う。帯を書いた方も、咀嚼しきれなかったのかもしれない。
4224先生が何かをしようとしていたことだけは伝わってくるが、それが何だったのかば分からない。それが分かる日まで、私たちは何度でも読み返すだろう。だから、この4コマのタイトルは「もっかい!」なのだ。
『まじん☆プラナ』
歴代きらら作品の中で、おそらく名前つきのキャラが最も多いマンガ。ハーレムマンガでもあるけど、主人公の有人だけでなく、友人の河原のことが好きなヒロインも何人もいるのが新鮮でした。
有人のおかんもれっきとした「ヒロイン」のひとりで、しかも一番かわいい。自分の人妻好き属性は、このマンガで植えつけられたと言っても過言ではない。魔法でおかんが若返った回は永久保存もの。
『ゆかひめ!』
チビっ子メガネ巨乳オタク大食いツッコミ委員長、という属性てんこ盛りな結花が、それ以上に個性的なクラスメイトたちに翻弄されるドタバタコメディ。きららの「メインキャラが4人」の作品の中でも、各キャラのバランスが特に絶妙。
「なかほご」(中原くんの過保護な妹)のスマッシュヒットにより、すっかり竹書房の人となったほっぺげ先生のデビュー作。このころから画力もネタも高レベルで、今のキャラットに掲載されていておかしくないと思う。
10年代~の作品(完結済み)
『スマイル・スタイル』
その名前から、女好きだと周囲に誤解されている山咲百合の苦難の日々。とはいえ本当に女の子たちにモテモテなので、あながち誤解でもない。
おそらく、今までで一番声を出して笑ったマンガ。この記事を書くために再読しましたが、やっぱり面白い。とにかく、百合のツッコミのキレがやばい。8コマ連続ツッコミは当たり前。最終回では、21コマ連続ツッコミという偉業も。
『オリーブ! Believe,”Olive”?』
序盤に張った伏線を、終盤で一気に解消するストーリー。和と洋のテイストが混じり合った魔法界の設定。すべてにおいて完成度が高い現代ファンタジー4コマ。
タイトルにも含まれているように、「信じる」ことがテーマになっていたと思う。魔法の存在を信じる。友達を、先輩を信じる。魔法使いは人間を、人間は魔法使いを信じる。現実の世界も、この作品のように優しければと願わずにはいられない。
スズにかけられた封印など、物語の根幹に関わる問題は2巻までにほぼ決着し、最終巻はまるごとエピローグに費やした構成も贅沢。やっぱり、最低でも3巻分のボリュームはほしい。2巻じゃ足りないよ、芳文社さん……。
『JKすぷらっしゅ!』
スクール水着の常時着用が義務という、ブラック校則も真っ青な設定に度肝を抜かれた。スク水を着ているから、スカートの中がチラ見えしても問題ない。何ならスカートを履いていなくても問題ない。
羞恥心をどこかに置き忘れてきたクラスメイトたちにドン引きしていた転校生のかなたも、澪花への恋心を自覚したあたりから壊れ始めていき、最終的にはむしろ一番やばい子に。
設定もキャラクターもぶっ飛んでいましたが、かなたと澪花の関係性は紛れもなく純愛。きららの4コマだから、とうやむやにせず、女の子が女の子を好きになるということに対して正面から向き合い、あのラストを描ききった作者に拍手を送りたい。
『はんどすたんど!』
ギャグの面白さは、歴代きらら作品の中でもトップクラス。「毎秒笑える」という帯のキャッチコピーは決して大げさじゃない。
体操部の部員たちはみんな初心者。唯一の経験者である部長のゆかも、本番になると緊張して力が出せない。彼女たちの演技は、まるでコント。だけど、どの子もふざけておらず、自分なりにまじめに取り組んでいる。だからこそ安心して笑うことができる。
シリアスな描写は極力避けながらも、それぞれの部員がちゃんと上達している様子を描いているのがお見事。最終巻のななみの跳馬シーンは、謎の感動がある。
『月曜日の空飛ぶオレンジ。』
ななみやヨシノが暮らす六日島では、不思議な出来事が起きる。道端にはスイカの自販機。朝起きたら顔が箱に。ケーブルを引くと空からタライが。そもそも、そのケーブルはどこから?
初めて読んだときは、正直なところ「何これ?」と思った。今も思うけど、『ゆるキャン△』を読んでから再読すると、キャラクターたちのつかず離れずの距離感はこのころから変わっていなかったんだと気づかされる。
「まんがタイムミラク」の「もっと自由に、4コマを。」というコンセプトに最もふさわしい作品。絵柄も作風もだいぶ変わったので、今のあfろ先生がヨシノたちを描いたらどうなるのか……という意味でもきらら展で見てみたかった。
『となりの魔法少女』
主人公のアキは魔法少女だけど、魔物と戦ったりはしない。戦うのは、自分自身の弱い心。友達に嫌われたくなくて作り笑いを浮かべてしまったり、よかれと思って言った言葉で傷つけてしまったりする、そんな、どこにでもいる普通の女の子のお話。
これまでに読んだマンガの中で、最も感情を揺さぶられた作品。「人間をなめるな 魔法使い」のシーンを読んだときの衝撃は今も忘れられない。このセリフを言ったウサの気持ち、言わせてしまったアキの気持ちを考えると胸が締めつけられる。
そして、あの状況で「ウサが悪い」と言えるけぇもすごい。彼女の「普通」さは、アキの「魔法」や、ウサの「理屈」にも匹敵する力だったと思う。
『ラストピア』
そと先生のデビュー作『ハルソラ行進曲(マーチ)』も好きですが、きらら展に展示するならという観点ではこちらをチョイスしたい。
中性的な魅力があるリッタのキャラクター(性別は最後まで明かされなかったが、作者の中では決まっていたらしい)。ほのぼのとしているようでどこか厭世的な世界観。見どころを挙げればキリがないけど、まずタイトルがいい。「ラストピア」ですよ??? 今までよく誰も使わずに残しておいてくれたと思う。
本作の終了を見届けるように、「まんがタイムミラク」は休刊。ミラクそのものが、4コマファンにとってのラストピア(最後の理想郷)だったのかもしれない。
連載中の作品
『がんくつ荘の不夜城さん』
文芳社の「まんがタイムきらり」という、どこかで聞いたような雑誌で萌え4コマを連載するマンガ家・不夜城よどみ先生。底辺マンガ家を自称するものの、連載は持っているのでかおす先生よりは売れているはず。
系列誌が多すぎて違いが分からない。面白いと思った作品はたいてい2巻完結。ファンタジー4コマは人気がない。……など、きららファンなら頷いてしまうあるあるネタが涙を誘う。
作者としてだけでなく、一読者としてもきららに親しむ鴻巣覚先生だからこそ描けるマンガ。これ自体が2巻乙に、という笑えないオチはつかず、2巻以降も連載が続くことが無事に決まっています。
『甘えたい日はそばにいて。』
ひなげしは、高校生小説家・楓の家でお手伝いとして働く女の子。失敗続きの自分を受け入れてくれた楓に、ひなげしは恋をする。事故で両親を失った楓も、ひなげしの優しさに惹かれていく。何もおかしくなかった。ひなげしがアンドロイドであること以外は。
アンドロイドを主人公にして、逆説的に「人間とは何か?」を問いかける意欲作。4コマ離れした重厚なストーリーとボリュームは、ミラクが目指した「もっと自由に、4コマを。」のひとつの答えでもある。
「幸腹グラフィティ? メシの描写がエロいマンガでしょ?」と思っている人にも読んでほしい。川井マコト先生は、メシだけじゃなくて人を描くのもうまいのだと分かるはず。
『どうして私が美術科に!?』
「間違えて美術科に入ってしまったなんて あほすぎて言えないっ…!」1ページ目のこのセリフと桃音の泣き顔に心をわしづかみにされました。
桃音を始めとして、登場人物たちはみんな「何か」を間違えて悩んでいる。失敗することが許されない今の世の中において、別に間違えてもいいんだという安心感と、一歩を踏み出す勇気をこの作品は与えてくれる。
作者の相崎うたう先生自身が現役女子高生だったと分かったときは、きらら読者(&きらら作家)に激震が走った。女子高生だから女子高生マンガが描けるとは思わないけど、「どうびじゅ」は相崎うたう先生にしか描けない。
『サジちゃんの病み日記』
愛する人の笑顔を見るため、ときに血を流し、ときに法を犯しながらも、己の信念を貫く一途な女の子の物語。嘘は書いてません。
きららのヤンデレヒロインというと、『チェリーブロッサム!』の沙咲野や『とらぶるクリック!!』の桃乃を思い出しますが、サジちゃんほど病んでいる子は初めて見た。それでいながらコミカルな描写も面白く、ギリギリ萌え4コマとして成立している。
最新のエピソードでは、サジちゃんを超えるヤンデレキャラも登場し、ヤンデレのバーゲンセール状態。雑誌の表紙を飾るのは、人気よりも倫理的な面で難しそうですが、かわいい作品が多いきららのアクセントとして末永く続いてほしい。
『恋する小惑星(アステロイド)』
天文部と地質研究会が合併して生まれた地学部。けれど活動内容は変わらず、天文班は夜空を見上げ、地質班は地面を見下ろす。見ている方向は違っても、それぞれの夢に向かって一直線な姿は等しく尊く、きらきらとまぶしい。
どのキャラもみんないい子だけど、やっぱりイノ先輩が好き。ただの「趣味」だった地図が、ふとしたきっかけで「夢」に変わるシーンが特にいい。自分の夢を、誰かに遠慮する必要なんてない。
作者のQuro先生は、デビュー前に『ひだまりスケッチ』の同人活動をされていたお方。それが今、ひだまりと同じキャラットで連載していることに、きららという地層の積み重ねを感じます。
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おわりに
自分が好きな作品であることはもちろんですが、本当にきらら展に展示されていてもおかしくない作品という観点で選ばせていただきました。人気や内容の面で。
今アツいきらら作品をフィーチャーするイベントだった「まんがタイムきららフェスタ!」と違い、「まんがタイムきらら展」は、過去のきらら作品に再び目を向けてもらえる良い機会になると考えています。
80作品+この記事の20作品の中で、気になるものがあればぜひ読んでみてください。それでは。